最近、慢性腎臓病(CKD)という病気が注目されています。文字通り、この病気は種々の原因により腎臓の機能が慢性的に低下した状態をいいますが、この病気は高血圧と密接な関係にあります。
高血圧とCKDは互いに悪循環の関係にあり、高血圧になると腎臓のはたらきが低下し、逆に腎臓のはたらきが低下すると高血圧が悪化するといわれています。
そのため、高血圧の患者さんにはCKDをよく理解していただき、早期に治療を始めていただく必要があります。
まず初めに腎臓の働きですが、主に4つあります。
1.尿を作る
食物を摂取して栄養分を吸収したあとの老廃物と余分な電解質を体内の水分とともに尿中に排泄します。
2.血圧の調整
過剰なナトリウムを排出し、血圧の調節をします。血圧が下がるとレニンと呼ばれる一種の酵素を出して、アンジオテンシンとよばれる血管を収縮させる物質を作り、血圧を上げる働きをします。腎臓病になるとレニンの分泌が多くなるため血圧が高くなります。
3.エリスロポエチンの分泌
造血ホルモンであるエリスロポエチンを分泌することで、赤血球の産生を促します。
腎臓病の末期には、このエリスロポエチンの産生が少なくなってしまうため貧血の症状が出てきます。
4.ビタミンDの活性化
カルシウムを骨に沈着させる時に必要なビタミンDを活性化させます。
腎臓が悪くなると、この活性化ビタミンDの産生が低下するため、骨が弱くなるなどの症状が出てきます。
慢性腎臓病(CKD)とは健康な人に比べて腎臓の働きが約60%以下に低下している、あるいはタンパク尿などの腎障害を起こしている場合をいいます。CKDは、そのまま放置するとさらに悪化し、体内の水分量を調節したり、老廃物をろ過する腎臓本来の働きがますます悪化していきます。
日本では20歳以上の健診データから、CKDの人が約1,098万人いると推測されています。
また、高齢者になるほどタンパク尿を合併する人が増えています。
CKDは正式には糸球体ろ過値(GFR)によって判定されます
これは腎臓にある糸球体のろ過機能が保たれているかどうかを調べるものです。
ただし、その測定が難しく、通常はまず尿検査で尿タンパクの有無を判定し、陽性(+)・陰性(-)で判定されます。
これは腎臓に異常があれば、まず最初に尿中にタンパクがあらわれるからです。
また、血尿を伴う場合も要注意です。
特に高齢者ではCKDの合併するケースが多いので必ず検査を受けましょう。
下記のいずれかが3ヵ月以上持続する
①腎障害の存在が明らか
②GFR(糸球体ろ過値)60mL/min/1.73㎡ 未満
CKDが進展すると、腎臓のろ過機能がほとんど働かなくなり、血液透析にいたることになります。実際、わが国ではすでに25万人もの血液透析患者さんがいます。
CKDは高血圧と密接な関係があり、高血圧を治療せずに放っておくと重症化し、タンパク尿を合併する頻度がより高くなります。
さらに恐ろしいのは、心臓病、脳卒中といった心血管疾患のおこる率が、CKDのある人はない人に比べて約3倍高くなることです。
血圧の管理とともに、尿蛋白を減少させ、腎臓を保護することが心血管疾患を発症させないために重要です。
食事療法
減塩が最も重要です。塩分をできるだけ控えめにしましょう。1日6g未満が目安です。また食べすぎやコレステロールの取りすぎにも注意して下さい。
生活習慣の改善
肥満に気をつけましょう(CKDはメタボとも密接に関係しています)。
現在はメタボ健診が義務づけられていますので必ず受診しましょう。
またウォーキングなどを心がけましょう。
目標血圧値
CKDを進展させないためにも血圧には十分注意しましょう。血圧の目安は130/80mmHg未満です。とくに尿蛋白が高い(1g/日以上)患者さんでは、さらに低い125/75mmHg未満を目標とします